障害年金の停止基準とA型事業所の給与の関係を再確認
はじめに就労継続支援A型事業所(A型)で働く際、多くの利用者様が抱える最も大きな不安の一つが「給与収入が増えると、障害年金が止められてしまうのではないか」という点です。
A型事業所の給与は、一般企業と同様に「所得」に該当しますが、結論から言うと、障害年金は原則として収入(給与)によって支給停止になることはありません。
このコラムでは、障害年金の支給停止に関する基本的な判断基準と、A型事業所での安定就労が年金に与える影響、そして誤解されやすいポイントを明確に解説します。
目次
1. 障害年金は「働けるかどうか」ではなく「障害の状態」で決まる
障害年金の支給・継続が判断される最も重要な基準は、収入額ではなく、あくまで「障害の状態が、年金法で定められた障害等級に該当するかどうか」です。
収入による支給停止の原則なし
老齢年金や遺族年金には、収入に応じて支給が停止される「在職老齢年金制度」のような仕組みがありますが、障害年金には、給与収入によって支給が停止される制度はありません。
重要ポイント: A型事業所で給与を得ていても、その金額だけで年金が止められることはありません。働くことは「経済的な自立」というプラスの評価であり、それだけで「障害が治癒した」と判断されるわけではないためです。
2. A型事業所での就労が年金継続審査に与える影響
障害年金は、通常、1年~5年ごとに「支給継続の審査(更新)」が行われます。この審査の際、A型事業所での就労状況が「障害の状態」を判断する材料の一つとなります。
① 就労状況が「考慮される」側面
審査では、診断書や病歴・就労状況等申立書を通じて、A型事業所での「安定就労ができているか」が確認されます。
確認される情報(A型事業所の給与以外の側面):
- 勤務状況: 週の出勤日数、時間、欠勤・遅刻の頻度。
- 業務内容: どのような合理的配慮を受けながら働いているか。
- 支援の状況: 職員による声かけや指示、体調管理などの支援がどれだけ必要か。
② 停止のリスクが高まるケース(働きすぎ)
障害年金の支給が停止される可能性があるのは、「障害が治癒した」、または「障害等級に該当しないほど状態が回復した」と判断された場合です。
特に注意すべき状況:
- 一般就労に近い働き方: 障害特性に関わらず、職員からの支援なしにフルタイム(週40時間)に近い勤務を長期間続け、安定した雇用を継続している場合。
- 診断書との乖離: 主治医の診断書に記載された「日常生活能力の程度」や「就労の制限」が、実際のA型事業所での働き方と大きく矛盾している場合。
3. 安定就労と年金継続のための対策
A型事業所での就労を年金停止に繋げないために、利用者様ができる重要な対策は以下の2点です。
① 主治医への正確な情報提供
障害年金の審査は、主治医が作成する診断書が最も重要です。主治医には、A型事業所での給与額ではなく、以下の「働く上での困難さ」を正確に伝えましょう。
- 体調の波: 業務中に休憩や声かけが必要な頻度。
- 困難な点: 職員の支援がなければ遂行できない作業や、継続的な集中力の困難さ。
- 欠勤・遅刻の理由: 欠勤が体調不良によるものであること。
② 事業所職員との情報連携
A型事業所のサービス管理責任者や生活支援員は、年金継続のための就労状況等申立書の作成に協力してくれます。
- 相談: 個別支援計画に基づき、体調管理を最優先にした無理のない勤務時間を設定しましょう。職員に「年金継続審査があること」を伝え、支援記録に「合理的配慮」や「継続的な支援の必要性」を記録してもらいましょう。
4. まとめ:収入ではなく「支援の必要性」が焦点
就労継続支援A型事業所の給与収入が直接、障害年金の支給停止基準となることはありません。
審査において重要なのは、「給与」の額ではなく、「障害特性により、事業所からのどれだけの継続的な支援や合理的配慮を受けながら働いているか」という点です。
無理のない働き方を徹底し、主治医や事業所職員と連携して「働く上での困難さ」を正確に伝えることが、年金継続と安定就労を両立させるための最重要ポイントです。

