就労継続支援A型事業所(A型)での勤務を経て一般就労へ移行した後、給与水準が上がることで、税金の手続きに関する疑問が生じることがあります。特に、「自分で確定申告をする必要があるのか?」という点は、一般就労後の安定した生活を維持する上で重要な金銭管理の課題です。
A型事業所での雇用契約と給与の実績を土台に、一般就労後の給与と税金の仕組み、そして確定申告の必要性について分かりやすく解説します。
1. 一般就労後の給与と税金の基本的な仕組み
一般企業に就職すると、A型事業所での勤務時と同様に、毎月の給与は「給与所得」として扱われ、以下の税金や社会保険料が支払う前にあらかじめ差し引かれます(天引き)。
① 控除される主な項目
所得税: 国に納める税金です。毎月の給与から概算で「源泉徴収」され、1年の終わりに会社が行う年末調整によって正しい金額に精算されます。
住民税: お住まいの松本市などの自治体に納める地方税です。前年の所得に基づいて計算され、翌年6月から翌々年5月までの12回に分けて給与から天引きされます(特別徴収)。
社会保険料: 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、働く上での安心を支える保障の費用です。
② 給与水準の上昇と税金
一般就労へ移行した後は、A型事業所時代よりも勤務時間が増えたり基本給が上がったりすることで給与水準が高くなるケースが多く、それにともなって所得税や住民税の支払い額も増加します。ただし、障害者手帳をお持ちの方が利用できる「障害者控除」などの税制上の優遇制度は一般就労後も引き続き適用可能です。
2. 確定申告が「不要」となる原則的なケース
お給料をもらう場所が1ヶ所のみであり、かつ会社で「年末調整」の手続きを正しく完了している場合は、原則として自分で税務署へ確定申告を行う必要はありません。
年末調整で完了する手続き
ほとんどの会社員は、以下の条件を満たしていれば、雇用主である会社側が税金の精算をすべて代行してくれるため、年末調整だけで手続きが完了します。
- 給与所得を得ている会社が1ヶ所のみである。
- 生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除、そして「障害者控除」など、年末調整の対象となる控除の各種申告書を期日までに会社へ提出している。
A型事業所から転職した場合の重要な注意点
年の途中でA型事業所を退職し、同じ年のうちに一般企業へ就職した場合、新しく入社した会社へ必ずディヤーナ松本などの前職の事業所から交付された「源泉徴収票」を提出してください。新しい会社が前職の収入と現在の収入を合算して年末調整を行ってくれるため、自分で確定申告をする手間を綺麗に無くすことができます。
3. 確定申告が「必要」または「有利」になるケース
会社の年末調整だけでは対応しきれない場合や、特定の要件に該当する場合は、自分自身で確定申告(または還付申告)を行う必要があります。
① 確定申告が「必要」なケース(義務)
以下のケースに該当する場合は、法律上、自分で確定申告を行う義務が生じます。
- 給与所得を2ヶ所以上から得ている場合: 本業のほかに副業(アルバイトなど)をしており、その副業の所得が年間20万円を超えているとき。
- 年の途中で退職し年末調整がない場合: A型事業所や一般企業を年の途中で退職し、その後その年の12月31日まで再就職しなかった場合は、会社で年末調整が受けられないため、自分で確定申告をして税金を精算します。
- 高額所得者の場合: 年間の給与収入が1,800万円(税制改正による基準)を超える場合(A型事業所からの移行直後では稀なケースです)。
② 確定申告が「有利」になるケース(還付申告)
年末調整では申請できない控除を自ら申告することで、毎月納めすぎていた所得税が手元に戻ってくる(還付される)お得なケースです。還付申告は、過去5年間に遡っていつでも行うことが可能です。
医療費控除(またはセルフメディケーション税制)
1年間(1月~12月)に支払った医療費の自己負担額(世帯合計)が原則として10万円を超えた場合、確定申告をすることで税金が軽減されます。メンタルクリニックへの定期的な通院やカウンセリング、処方薬の費用が継続的にかかる方は、対象となる可能性が高いため、領収書や医療費通知を大切に保管しておきましょう。
障害者控除の適用漏れ
障害者手帳を保有しているにもかかわらず、会社の年末調整の書類に記載し忘れてしまったり、会社側に手帳の存在を伏せてオープンにせず申請しなかったりした場合でも、自分で税務署へ確定申告(または還付申告)を行うことで、後から障害者控除を正しく適用させて税金の還付を受けることができます。
※その他、初めて住宅ローンを組んだ年の「住宅ローン控除」や、災害や盗難に遭った場合の「雑損控除」なども確定申告が必要です。近年は、スマートフォンとマイナンバーカードを使用したe-Tax(マイナポータル連携)により、自宅からでも非常に簡単に還付申告が行えるようになっています。
4. まとめ:基本は会社任せ、還付は自分で行う
一般就労後の基本的な税務手続きは、お給料を得ている企業が年末調整という形で代行してくれるため、特別な事情がない限りは自分で確定申告を行う必要はありません。
しかし、医療費控除や年末調整で漏れてしまった障害者控除を最大限に活用し、正当な還付を受けるためには、自ら能動的に確定申告を行うことが金銭管理の上で非常に有利になります。A型事業所で学んだスケジュール管理や書類整理の経験を活かし、会社から受け取る源泉徴収票や医療費の領収書を日頃から大切に保管し、必要に応じて税務署の相談窓口や信頼できる外部支援者を上手に活用しながら、確実な手続きを進めていきましょう。

